【メンバー執筆】ロボットと人工知能⑧:生命、宇宙、万物についての究極の疑問の答え
こんにちは!
私は充実した夏休みでした!
そして、都留文科大も9月末から後期授業が開始されました。残念ながら遠隔授業が継続中ですが、なんとか充実した大学生活にしたいですね!
さぁ、連載記事です!
前々回が8月1日、前回が8月30日更新だったので、ほぼ月刊連載ですね.......。前回から42日も空きましたが、いよいよ今回が最終回です!!!
予告していた通り、この記事を読んでくださった皆さんだけに、宇宙の真理を教えちゃいます!(クラスのみんなには内緒だよ!)
"究極の疑問の答え"
予告では「宇宙の真理」と書きました。
その方が分かりやすいのでね。
ただ、ちょっと正確ではありません。
正確に言うと、今回皆さんにお教えするのは、
「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」
です。
元々は英語での問いなので原文も掲載しておきますね。
"Answer to the Ultimate Question of Life, the Universe, and Everything"
となります。
では、お教えします。
心の準備は大丈夫ですか???
なにせ、全世界、いや全銀河の人々が問うような、まさに「究極の疑問」の答えですからね。
もしかしたら、世界観がガラリと変わってしまうかもしれません。明日の朝起きて目にする世界の見え方が別物になるかも。
覚悟はよろしいですか???
不都合が生じても、一切責任とか取らないですから、どうかご了承ください。なにせ、「究極の問い」の答えですから。
さぁ、いよいよです。
─────あっそうだ、せっかくですし、私がこの前に食べに行った美味しいラーメン屋さんの話をしましょうか??
えっ、全く興味ない?
早く教えろ?
仕方ないですね.......。
では、「究極の疑問の答え」とは.................
その答えとは.......................................
42
です。
「は?」という声が聞こえてきます。
狐につままれたような顔をしているか、
意味不明でぽかんとしているか、
怒りで我を忘れてスマホを握り潰したか、
「ラーメンの話を聞いておけばよかった」と後悔しているか、
あるいは、最初から知っていた方は笑っていたでしょうね(笑)
もちろん説明をします!
なので、安心してくださいね。
「42」の解説
「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」という問いと、「42」という答え。
これは、英国の作家ダグラス・アダムスが1979年に発表したスペースオペラ小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場する有名なエピソードです。
まずは、この作品の概要からお話することにしましょう。
銀河ヒッチハイク・ガイド
『銀河ヒッチハイク・ガイド』は1979年に英国の作家D.アダムスが発表したSF小説です。半世紀近く前の作品にもかかわらず、熱狂的なファンが多いシリーズで、今でもSF作品における古典的傑作と評価されている作品です。
元々は1978年のBBCのラジオドラマだったものが小説化、さらには映画・TVドラマ・アメコミ・舞台劇......など幅広く展開されている点からも、人気がうかがえます。
【あらすじ】
銀河バイパス建設のため、ある日突然地球が取り壊しになってしまう。宇宙人フォードに助けられた唯一の生き残り・英国人アーサーは、宇宙でヒッチハイクをするハメになる。
面白い小説ですよ!
SF小説が好きな人はぜひオススメです! 特に『STAR WARS』とか『スター・トレック』とかを楽しめる方なら、きっとハマる内容のはずです!
「42」の説明
さて、そろそろ読者の皆さんも「42ってなんだよ」とか「人工知能とどう関係するんだよ」とか考え始めていることと思います。
ようやく、解説編です!
端的に言うと、
超知性汎次元生物が、全銀河で最も優秀なスーパー・コンピュータ《ディープ・ソート》を作成し、「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を質問しました。
そして、750万年という時間をかけて演算したコンピュータが導きだした答えが「42」という数字でした。
というお話です。
もう少し展開を詳しく提示します。
河出文庫版*1から引用させていただきます*2。
※スマホの方は画面を横にすると読みやすいかも。
言うまでもなく、人生にはさまざまな悩みがつきものである。なかでもごく一般的な悩みはこうだ。人はなぜ生まれ、なぜ死ぬのか。生まれてから死ぬまでのあいだ、人はなぜいつもいつもデジタル時計をはめていたがるのか。
はるか一千万年以上もむかしのこと、超知性況次元生物(かれら自身の汎次元宇宙では、人類とそれほどちがわない形態をとっている)のある種族が、人生の意味についてのべつ議論するのはもううんざりだと考えた。[...] そこでかれらは、本腰を入れてこの問題に取り組み、最終的な解決に持っていくことにし た。
そしてそのために、ずば抜けたスーパーコンピュータを建造した。
[...]
「おお、ディープ・ソート・コンピュータよ」彼は言った。「おまえを設計したのはこの使命を実行してもらうためだ。さあ、いまこそ与えてくれ......」そこでいったん間を置いて、「......回答を!」
「回答?」ディープ・ソートは言った。「なんについての回答ですか」
「生命の!」フークが言った。
「宇宙の!」ランクウェルが言った。
「その他もろもろの!」ふたりは声をそろえて言った。
ディープ・ソートはしばらく黙って考え込んだ。
「むずかしい」ついに彼は言った。
「しかしおまえなら答えられるだろう?」
ふたたび長い間があった。
「はい」とディープ・ソート。「答えられます」
[...]
「しかし、このプログラムを実行するにはいささか時間がかかります」
フークは気短に時計に目をやった。
「どれくらいかかる?」
「七五かける百万年です」ディープ・ソートは言った。
ランクウィルとフークは目をむいて顔を見あわせた。
「七百五十万年だと!」ふたりは声をそろえて叫んだ
「そうです」ディープ・ソートは堂々と言い放った。
[...]
「七百五十万年間、わが種族は待ち続けてきました。この偉大な日を! きっと啓蒙の日となるであろうこの日を!」旗振り役の男は叫んだ。 「ついに、回答の日がやって来たのです!」
有頂天の群衆から万歳の声が沸いた。
「もう二度と」男は声を張りあげた。「もう二度と、朝に目覚めて頭を悩ますことはないのです! わたしは何者なのか、わたしの生きる目的はなんなのか、わたしが起きあがらず仕事に行かなかったからと言って、この宇宙にほんの少しでも影響があるのかと。なぜなら今日、ついに単純にして明快な答えが、生命と宇宙とその他もろもろという悩ましい問題を、すべて一挙に解きあかす答えが出るからです!」
[...]
「答えですか?」ディープ・ソートがおごそかに口をはさんだ。「出ました」
ふたりの男は期待に身を震わせた。七百五十万年はむにはならなかったのだ。
「まちがいなく出たのか?」ファウクが息を切らして尋ねる
「まちがいなく出ました」ディープ・ソートが請けあった。
「森羅万象の答えが? 生命、宇宙、その他もろもろについての深遠なる疑問の答えが出たのか?」
「そうです」
[...]
「それで、その答えを聞かせてもらえるのだな?」ルーンクウォルが催促する。
「はい」
「いま?」
「いまです」
ふたりは乾いた唇をなめた。
「ですが、たぶん」とディープ・ソートは付け加えた。「気に入らないと思いますよ」
「そんなことはどうでもいい」ファウクが言った。 「聞かせてくれ! いますぐ!」
「いますぐですか」ディープ・ソートが尋ねた。
「そう、いますぐだ!……」
「わかりました」コンピュータは言い、また黙り込んだ。ふたりの男はいても立ってもいられない様子だった。緊張が耐え難いほどに高まる。
「ですが、まったく気に入らないと思いますよ」ディープ·ソートが意見を述べた。
「いいから早く!」
「わかりました」ディープ・ソートは言った。「深遠なる疑問の答えは……」
「答えは……」
「生命、宇宙、その他もろもろの答えは……」とディープ・ソート。
「答えは……!」
「答えは……」ディープ・ソートは言い、また口をつぐんだ。
「答えは……!」
「答えは……」
「答えは……!!!……?」
「四十二です」ディープ・ソートは、はてしない威厳をこめ、あくまでも落ち着きはらって答えた。
ディープ・ソートが答える場面がこちら。
映画からで、1:20あたりからが分かりやすいです。
Answer To The Ultimate Question - The Hitchhiker's Guide To The Galaxy - BBC
これが全てです。
小説本編の物語としては、まだまだ衝撃的な展開が用意されていますが、ここでは「42」の説明をするだけなので、止めておきます。
当時、銀河No.1のスーパー・コンピューター、あるいは人工知能が演算して導き出した答えが「42」です。間違いもありません。これが究極の答えでした!
「42」のパロディ
この「42」という数字は、単なる数字でありながら、SFファンの間では合言葉的な感じになっていて、色々なところに登場します。
ここでは、Wikipediaとかを参照しながら、いくつか紹介します。
Google検索
Googleの検索ボックスに「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」などと打ち込むと、きちんと演算して1秒も掛からずに「42」を返してくれます。(検索)
さすが、Google先生ですね!
IBMのコンピューター
第2回の連載記事で、チェス世界チャンピオンを破ったIBMの人工知能「ディープ・ブルー」を紹介しました。
実は、このAIにはお兄さんがいます。その名も「ディープ・ソート」。チェス世界王者を破るために開発されたものの、残念ながら敗北という結果になってしまったので、後継のディープ・ブルーを開発したのでした。
これについては、小説を読むと、もう少し深い繋がりがあるのに気付きます!
『シュタゲ』のブラウン管テレビ
この連載記事の中でも取り上げたゲーム/アニメ『STEINS;GATE』に登場するアイテム「ブラウン管テレビ」の大きさが42型なのだそう。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』42周年
なんと今年、2020年は原作となったBBCラジオ放送から「42周年」という記念すべき年なんです!!!!
おわりに
2020年の5月から、長々と連載記事を書いてきました。どの記事も1万文字を超える長文で、読んでくださった方、本当にありがとうございます🙏
「ロボットと人工知能」をテーマに据えて、アニメやフィクションなどの作品を取り上げながら、SFが面白くなる知識や現実世界の状況を書いてきたつもりです。
ロボットと人工知能の概要を書き、それぞれの開発や思考実験に触れ、生命や意識に関する話を出し、そして最後には「究極の答え」というSF界では有名なエピソードを紹介しました。
「究極の疑問」は、ロボットと人工知能に関する連載記事のフィナーレを飾るに相応しい壮大で好奇心を刺激する話題になっているはずです!
第1回:ロボットとアニメの歴史
第1回、「ロボット」という存在について、その概要をまとめた上で、フィクションの中で描かれてきたロボットについて整理しました。 その後、日本のロボアニメについても総覧しました。
第2回:アニメで考えるロボ倫理
第2回目では、「ロボット三原則」,「デッカード問題」,「不気味の谷」というロボットに関する倫理や思考実験について重要となる概念をまとめました。
第3回:"SAO"に見るAIの種類と汎用人工知能。
第3回ではテーマを「AI」に切り替えて、その歴史的展開を追いました。そしてアニメ『SAO』内の台詞をお借りしてAI開発について説明しました。
第4回:人工知能の開発課題と思考実験
第4回では、AI開発における重要概念「チューリングテスト」や「中国語の部屋」、「フレーム問題」や「無限の猿定理」などを、具体例を取り上げながら述べていきました。
第5回:人工知能と人間はどう付き合うか。
第5回。人工知能と人間の関係について「恋愛」,「監視」,「脅威」という3つについて、『PSYCHO-PASS』や『サマーウォーズ』など有名作品を挙げながら現状を紹介しました。
第6回:AIは人間を破滅に導くのか?
第6回では、「AI脅威論」を取り上げて、最前線で活躍する研究者の言葉を紹介しました。最後には「AIの呪い」を記述しました。
第7回:人間、意識、知能、生命とは何か?
ある程度概念の説明が終わったところで、第7回ではより深い部分、生命や意識について本質的な内容を、『シュタゲ』や『攻殻機動隊』などの作品の言葉を借りながら説明しました。
第8回:万物についての究極の疑問の答え
そして、最終回と宣言した第8回では、今までの話を総括する形で「万物についての究極の疑問」を提示しました。
けど、なんか、最後が曖昧に終わっちゃいましいた。
私が書きたいことは大方書いたのですが、なんかしっくこない......。そもそもアニメ作品が登場しなかったし、まとめも微妙な感じ。
これはアレですね、「大風呂敷を広げたすぎて回収できなくなった」タイプです(笑) これは非常にマズい訳です。
なので、番外編を書きます!!
実は、最後の最後で提示しようと思っていた、ラストを飾るに相応しいアニメ作品は考えてあります。
だから、「ロボットと人工知能」をメインにした連載記事はここで一旦幕を下ろします。その上で、番外編としてもう少し文章と紹介を書きます!
媒体に関しては、このブログに投稿するか、11月上旬に発表予定の機関紙に掲載するか、両方に載せるか、考え中です。
あれです、TVシリーズで上手く完結しなかったから、劇場版にラストを持ってくる手法と一緒です(笑)
ぜひ、楽しみにしていただければと思います!
【連載記事】
第1回:ロボットとアニメの歴史
第2回:アニメで考えるロボ倫理
第3回:"SAO"に見るAIの種類と汎用人工知能。
第4回:人工知能の開発課題と思考実験
第5回:人工知能と人間はどう付き合うか。
第6回:AIは人間を破滅に導くのか?
第7回:人間、意識、知能、生命とは何か?
第8回:生命、宇宙、万物についての究極の疑問の答え