【メンバー執筆】現実の延長にある「SF」の魅力:フィクションとリアルを繋ぐ《物語》の力
こんにちは!
寒い寒い季節となりましたが、都留の皆さんはお元気でしょうか?
2020年5月から「ロボットと人工知能」という記事を全8回で連載してきたアラ氏です。連載記事は10月10日に最終回となりました。
そして、12月1日。
サークル機関紙が発行されました。編集、本当にお疲れさまでした。今回も密度濃い読み応えある記事が掲載されているので、ぜひご覧ください!
さて、その機関紙の中で、私は「現実の延長にある「SF」の魅力:フィクションとリアルを繋ぐ《物語》の力」という記事を寄稿しました。
今回のブログ記事の標題ですね。
ということで、寄稿記事の内容を改めてブログにも掲載したいと思います。せっかく紙面制限のないブログなので、ディレクターズカット版ということで、追加情報を色々と盛り込んで掲載します!
1章:現実の延長線上にある未来の文学
「SF」とは
SFについて書きます。SFの魅力や《物語の力》について考えていることを書きます。根拠とか一切ない、単なる一人語りです。もし、あわよくば、読んでくださった方に新しい価値観や見方を示せたり、SFが苦手な方が興味を持っていただけたりしたら、とても嬉しいと思います!
SFとは何たるかをお話する必要がありましょう。
そこで、ここでは「国際SFシンポジウム」の言葉をお借りしようと思います。大阪万博が開催された1970年、万博運営にも携わったSF作家・小松左京(『日本沈没』など)らが国際SFシンポジウム(ISFS)を開催。冷戦当時、日米英ソの作家が同じテーブルに着くという奇跡的な偉業 を成し遂げます。
発起人は小松左京, 星新一, 筒井康隆, 手塚治虫など。そして、アイザック・アシモフ(『われはロボット』)、レイ・ブラッドベリ(『華氏451度』)、アーサー・C・クラーク(『2001年宇宙の旅』)、イワン・エフレーモフ(『アンドロメダ星雲』)などSF界の巨匠たちが招待されました。
以下は、開催にあたり小松が寄せた趣意書です。
SF(科学小説 )は、すでに二十世紀の初頭から、近代科学と、技術文明の切り開いた新しい認識の地平を、対象としてきました。それは、一方において、古代神話以来の時間と空間の冒険、雄大な想像力の冒険の文学の伝統を受け継ぎながら、それを開け始めたばかりの新しい「科学の時代」に向かって投げかけました。[…]SFは数千年にわたって文学の伝統的主題であった「人間」の概念にかえて、「人類」という概念をその中心にすえてきました。そして、その概念を中心にすることによって、初めて現れてくる新しい問題──進化、未来社会、文明の危機、物質と人間、機械と人間、宇宙と人間等々を取り上げてきました。
国際SFシンポジウム委員会事務局*1
短い文章ですが、「SF」という文学の位置づけを表明し、扱う内容を端的に説明した極めて良い文章だと思います。50年前とは思えないです。
ブログ連載「ロボットと人工知能」
サークルブログにて、「ロボットと人工知能」と題した記事を全8回構成で投稿しました。約5ヶ月に渡り、60以上の作品を取り上げながらそれぞれ1万5千文字ほどの分量の記事を公開するという、長期連載になりました。
さらに、機関紙に寄稿した本稿は、ブログ連載の番外編という位置づけでもあります。そこで、まずは連載記事の振り返りを簡単にしておきます。
①ロボットとアニメの歴史
②アニメで考えるロボット倫理と思考実験
③"SAO"に見るAIの種類と汎用人工知能
④人工知能の開発課題と思考実験
⑤人工知能と人間はどう付き合うか。
⑥AIは人間を破滅に導くのか?
⑦人間、意識、知能、生命とは何か?
⑧万物についての究極の疑問の答え
歴史に始まり、重要概念の解説、現在から未来へのAI開発状況、人間との関係、生命観や生物の話、そして宇宙開闢で完結を迎えるという長い連載でした(笑)
この話題を扱った理由は、社会的に大きな注目を集めている分野だから。そしてアニメ作品も数多くあるから、などです。
でも書いた一番の理由は【SFを楽しんで欲しい】ということに尽きるのです。記事内で取り上げた作品はどれも面白い作品ばかり。けど、その背景にある概念や歴史や現実との関係を知ると、物語はより一層輝きを増すし、キャラクターの台詞や登場するガジェットの面白さに気がつくと思うのです。そんな背景があり、記事を執筆しました。それに、書くのは楽しいですしね!
SFが現実とリンクしている
現実世界とのリンクを保っているところ。これがSF作品の醍醐味だと私は思っています。完全なるファンタジーではなく、一方で完璧なドキュメンタリーでもない、私たちが生きる“世界”と絶妙な距離にある物語が《SF》なのだと思います。
小説家・野崎まどの作品『HELLO WORLD』の主人公・堅書直実の台詞がとても良いです。
「SFが好きなんです。SFって新しい世界を見せてくれるんです。それは、すごく素敵で、遠い世界で。けど、でも、それは夢物語じゃないんです。SFのFはフィクションですけど、Sのサイエンスが、現実と繋がっている。
物語なのに、普通の世界の延長にあるんです。そう思うと、この世界も、なんだか小説の一部みたいに思えて」
堅書直実*2
この台詞が全てな気がします。
SFのフィクションの背後にはサイエンスがあります。物語に登場する科学技術は最新の研究成果をベースに想像されたものだし、万物の自然法則は全宇宙で同じです。完全なる妄想の世界ではなく、私たちの生きる現実に根付いているところが、SFの強さなのだと思います。
魔法か、科学か
魔法か、科学か。
SF作家アーサー・C・クラークは、彼が提唱した三原則の中で、SF好きなら誰もが知っているような、次の言葉を残しています。
十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない
アーサー・C・クラーク
まさに、その通り。しかし、魔法として処理するのではなく、あくまでも科学技術として根拠や理論を用いて描写することで、魔法とは違う形として提示するのがSFの面白さのひとつだと思います。
「魔法」だと完全に別世界・別次元の話だけど、「科学」は現実の延長線上にあるものですからね。────まぁ、『ドラえもん』の「ひみつ道具」とかになると話は変わりますけど(あれは「すこしふしぎ」の”SF”ですしね)。
アーサー・C・クラークについては、とりあずNHKの「100分de名著『アーサー・C・クラーク スペシャル』を掲載しておきますね。
www.nhk.or.jp
現実への反応速度と規模
反応速度と規模。あらゆる《物語》が現実世界との関係を何らかの形・距離で構築していきます。ただ、その速度と規模の面でSFのと肩を並べるものは少ないのではないでしょうか。
SFが影響される事象は最先端のものであり、かつ社会的インパクトの大きいものが多いですよね。戦争や宇宙開発、災害、サイバー技術などなど。最新の研究成果や報道を物語に取り込むことで、より物語は現実感を増し、さらに社会的存在感や正当性が確立されるような気がします。
例えば、1954年にビキニ環礁で行われた水爆実験に着想を得て製作されたのが特撮映画『ゴジラ』(1954)でした。漫画家・手塚治虫の作品はどれも社会問題や国際情勢が素早く反映されています。
現実世界で出来事や技術革新が起こり、それがSF作品にも波及し、SFが素早く反応するという関係が、2つの世界が地続きであることの証のようだし、SFというジャンルの持つ特性だと思うのです。
SFが持つ予見性
予見性。SFが持つもうひとつの大きな力がこれです。作品発表当時の科学技術から想像力を駆使して未来を予測する、というのはSFが持つ大きな力だと思います。なので個人的には【予言】ではなく、【予見】と表現したい気持ちが強いです。
これがあるから、古典SFとかを観ても古臭さを一切感じさせない面白さがあるのだと思います。再び、1970年のISFS趣意書から文章を引きます。
現在、二十世紀の最後の三分の一に足をふみいれた地点において、文明の状況は、かつて、SFのが予言的に描き出した状況に酷似したものになりつつあり、一部ではそれを超えつつさえあります。
核エネルギーの利用、テレビの普及、「思考する機械」の出現、惑星間旅行、宇宙中継、地球上のあらゆる地域を数時間で結ぶ航空網──さらに、巨大化し加速されつつある「機械文明」の不気味な発展ぶりは、私たちの生活や社会や未来を、人類的・地球的スケールでもって、真剣に考える必要性を増大させ[…]ます。
国際SFシンポジウム委員会事務局
例えば、アポロ11号が月面探査をする約100年も前、1865年にジュール・ヴェルヌが発表した『月世界旅行』では、作中の宇宙船とアポロ11号の大きさは10%も違わず、「月到達に必要な速度や時間の計算はほぼ完璧」だったと言います*3。作家アイザック・アシモフが1950年に小説内で提唱した「ロボット工学三原則」は、現在、実際の研究現場で遵守される規範の1つになっています。
【SFが未来を予言・予見・予測】するとか、【現実がSFに追いつく】とか、そういうことを考えたり体験したりできるのも、面白さだと思います!
ちなみに、この予見性は“逆方向”にも有効だと思います。つまり、過去改変やスチームパンク系の物語。「もしこの時代にこの技術があったら」という仮定の下に説得力ある世界観を構築している訳ですから、やっていることは同じだと個人的には思います。
現実から《未来》を考える
未来を想像することができるのが、SF作品の持つ最大の力にして最高の魅力ではないでしょうか。単純に、そして純粋に、未来のことを想像するのって楽しいし、“IF”の世界を考えるのは面白いし、架空のことを読んだり観たりするのは良いものです。誰もが『ドラえもん』の「ひみつ道具」に憧れたり、『ターミネーター』のT-800に恐怖を覚えたりしたのではないでしょうか。で、それが100%フィクションじゃないところが素晴らしいというのは、上述の通りです。
三度、ISFS趣意書からの引用です。
SFが、きわめて徐々にではあっても、着実に科学のもたらす「新しい認識」にもとづく自由な思考の場において、人類と宇宙を探求し、表現しようとする「未来の文学」の地位を築き上げてきたことは、否定できないと思います。[…]
「SF的思考」「SF的センス」「SF的イメージ」は、現代から未来へかけての、まったく新しい、あるいは、未知の状況を感覚的にキャッチする手段として、社会の「基礎的感受性」の一つになりつつあります。
国際SFシンポジウム委員会事務局
「未来の文学」とはいい響きですね。そして大事なのは、「自由な思考」によって「人類と宇宙を探求し、表現」することを試みてきたことだと思います。ただ面白く興味深いストーリーを示すだけではなくて、知識・発明など人類が生み出したもの、人間の思考・認識・行動などの内面的な部分を掘り下げたり、未知が占める宇宙を描いたりしてきたところが凄いのだと思います。まだ見ぬ世界・未来を描き出せる力が、SFにはあると心からそう思うのです!
引用箇所の後半についても、ネット上のVRライブに参加したり、地球外生命体や火星移住計画の議論を思い浮かべると、SF的な思考をしているのだと納得しませんか?
価値規範を問うSF
価値判断を考えるヒントになるのが、SFではないでしょうか。上の「SF的イメージ」とかと重なるかもしれません。2020年に開催された現代美術の展覧会*4で、次の言葉が掲げられていました。
科学は、物事が何であるかは決められるが、どうあるべきか決められない。だから科学の領域を超えた価値判断が依然として不可欠なのだ。
アルベルト・アインシュタイン*5
では、何が「科学の領域を超えた価値判断」になるのか。恐らく、この展覧会の監修者はそれが「美術」であると言いたいのだと思います。ただ、私はもう少し広く、美術・哲学・芸術・音楽・宗教・物語…と何でもよいと思います。
中でも科学における価値判断を考察できるのは、SFの持つ特性だと思うのです。もっと広く考えるなら《フィクション》ということになりましょう。
2章:フィクションとリアルの関係
「虚構 vs. 現実」でなく「虚構×現実」
虚構vs. 現実。映画『シン・ゴジラ』のキャッチコピーにも用いられた2つの言葉。虚構と現実、フィクションとリアル。この2つは対立概念として扱われることが多い気がします。しかし、そこには敵対的相違よりもむしろ、影響を与え、与えられる相互作用や融合があると私は考えています。今まで「SFが現実の延長にある」と力説してきました。ここでは範囲を少し拡張して、フィクション全般を広く見ることにします。
2018年、日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮を主題にした展覧会「MANGA⇔TOKYO」がパリで開催され、2020年には日本凱旋展示「MANGA都市TOKYO」が国立新美術館で開催されました。数多くのサブカル作品の舞台や題材になってきた巨大首都・東京。両者が関係性を保ってきたのかを、作品と資料から解き明かす展示です。その挨拶文を次にご紹介します。
単に東京の特定の風景が背景に描かれるにとどまらない、場所とフィクションとの相互関係が、そこに立ち現れてきました。
それらの作品が、いかに東京という都市の特徴や変化を映してきたのか。逆に、現実の東京が、いかにフィクションの成立基盤となってきたのか。
さらに、それらフィクションやキャラクターが、現実の東京にいかなるイメージを重層的に付与し、作用をおよぼしてきたのか。
「MANGA都市TOKYO」展*6
この展覧会を参照しながら、少し書いていきます。「現実→虚構」という方向は分かりやすいと思います。東京タワーを破壊する姿は『ゴジラ』の象徴となり、東京の風景を描いた『君の名は。』では聖地巡礼が盛り上がりました。『ゆるキャン△』は山梨でキャンプをし、『けいおん!』など京アニ作品の多くは京都が舞台です。
ではその逆、「現実←虚構」はどうでしょうか? すぐ、虚構が現実を侵食している事実に気がつくはずです。『ガルパン』の舞台、大洗町は町をあげて聖地巡礼を推しています。アニメ『花咲くいろは』に登場する金沢市の湯涌温泉では、作中の架空のお祭りを実施してもう7年目。東京の街では、壁面や電車内など至るところでキャラクターのビジュアルを目にします。同展では次のように指摘しています。
都市の中でも、とりわけ公共的性格が強い空間において、現実の人々に混じってマンガやアニメのキャラクターが行き交うという、拡張現実のごとき光景を生み出しています。
「MANGA都市TOKYO」展
元々、日本人がおおらかなのかもしれませんが、これだけリアルとフィクションが融合し、影響しあっている場所はないと思うんです。パリやワシントンD.C.で虚構が入り混じった光景なんてないでしょうからね。
破壊と復興とフィクション
災害や戦争など、日本は数々の「破壊」に襲われてきました。しかし、その度に復興してきました。フィクションは、そうした現実の動きも作品に取り込んでいるのです。
『火垂の墓』や『この世界の片隅に』など戦争を取り上げたり、『東京マグニチュード8.0』や『日本沈没』のように地震を題材にしたり。
そして、破壊だけではなく、復興する姿も描いてきました。例えば、3.11=東日本大震災を題材にしたNHK連続ドラマ『あまちゃん』や、山本寛監督の『Wake Up, Girls!』に代表される東北三部作では復興を願う物語が示されました。
そして今、この2020年、全世界が未曾有の感染災害《COVID-19》に陥っています。全人類が共通の脅威に等しく直面するというのは、人類史上初めてではないでしょうか。そんな中、感染症を題材にしたSF作品が注目を集めています。アルベール・カミュ『ペスト』、小松左京『復活の日』、高嶋哲夫『首都感染』などなど。
この章では最後に、庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』から、コロナ禍の中にある日本と重なる台詞を引用します。元来、「ゴジラ」は原爆や地震などの自然災害を具象化したような存在として生み出されました。
日本、いや人類はもはや、ゴジラと共存していくしかない
巨大不明生物特設災害対策本部・矢口蘭堂
スクラップアンドビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる。
内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹
3章:映画『HELLO WORLD』の紹介
デジタル<SF>とアナログ<日常>の融合
最後に、私がぜひ見て欲しいと常々思っているSFアニメ作品を紹介して終わりにします。『SAO』等を手掛けた監督・伊藤智彦と、『正解するカド』などの鬼才・野崎まどがタッグを組んで2019年に公開された映画『HELLO WORLD』です。
【物語】
舞台は2027年の京都。崩壊する世界を前に、主人公の高校生・直実が、好意を寄せる瑠璃を守ろうと奮闘する、SFとラブストーリーが融合した物語になっています。
映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』予告【2019年9月20日(金)公開】
【おすすめポイント】
この映画、SF作品として天才的な傑作です。SFに苦手意識があっても、『君の名は。』や『サマーウォーズ』等を楽しめる人なら十分にこの映画も楽しめますよ!
まず劇伴や劇中歌が超豪華です!
OKAMOTO'S・AAAMYYY・Official髭男dism・Nulbarichら有名アーティストが楽曲を手掛けます。その他ミュージシャンらが「2027Sound」というユニットを組んで劇中の音楽を作り上げているんです。
映画「HELLO WORLD」/2027Soundトレーラー
そしてSFを象徴する《デジタル》と融合するのが、「ほんわか日常」を描く学校生活や恋愛など日本のアニメらしい《アナログ》な様子。小難しい部分と萌え要素ある可愛らしい日常とが、絶妙なバランスで組み合わされており、素晴らしく秀逸な物語です!
一方で、SF的視点に立つと、この記事で書いたことが全て包含されていると言えます。舞台である京都の街や名所が見事にCGで再現されて、作り物なのに現実感がもの凄いです。
さらに、Googleなど現在のネット社会を基盤に構築された“一歩先の世界観”がよく出来ています。そして、公開年と同じ2019年に起きた「京アニ放火事件」という痛ましい事件への追悼であるかのようなフィクションの力を感じ、感動しました。
まぁ、私の取るに足らない紹介では蛇足になってしまうので、この映画のプロデューサー・武井克弘の紹介コメントを掲載させていただきます。
映画『HELLO WORLD』は不特定多数のお客さんに向けていると同時に特定のお客さんに向けた作品でもある。それはアニメを愛し、SFを愛し、小説を愛し、音楽を愛し、映画を愛し、つまりは全ての物語を愛してきたあなたです。#ハローワールド
— 武井克弘(CV:小山力也) (@takei_katsuhiro) 2019年9月20日
一度でもフィクションに救われた経験のある人、作中のキャラクターの幸せを願ったことがある人は、ぜひ映画『HELLO WORLD』を観てほしいです。#ハローワールド
— 武井克弘(CV:小山力也) (@takei_katsuhiro) 2019年9月5日
終章おわりに
おわりに
読んでくださり、本当にありがとうございました。脈絡なく長々と書いてしまいましたが、当の執筆者は非常に楽しかったです。
現実世界との延長線から、SF作品について取り上げました。もし、少しでも「SFの面白さ」が伝わり、興味を持って頂けたら本望です! 同時に“フィクション”と“リアル”の関係を考えるきっかけになれば嬉しいですし、「物語が持つ力」に気づいて頂けたのなら幸いです。
最後は、1970年に開催された国際SFシンポジウムに参加した五カ国(日米英ソ加)が採択した共同宣言から引用をさせていただき、結びとしたいと思います。
私たちは人類愛にもとづく確信をもって、SFが世界平和のために、未来と人類のため、大きな効果を発揮しうるようになるものと信じております。[…]
SFの向上と、世界のSF人の協力によって、地球の未来と、人類の子孫のために貢献できると信じています。[…]
地球と人類のより良き未来のために。
1970年9月3日
国際SFシンポジウム参加五カ国共同宣言
おまけ
今回、機関紙に掲載した記事内では載せきれなかった内容をちょこっと書きます。
まず、記事の中でたびたび引用した「国際SFシンポジウム」に関係した話です。実は、フジテレビがこのコロナ禍の2020年に「世界SF作家会議」というものを企画しました。
この世界的パンデミックの中、SF作家という「未来のプロフェッショナル」たちが討論したり雑談したりする形式で現在と未来を考えます。
出演するのは、いとうせいこう、大森望、新井素子、冲方丁、藤井太洋、小川哲という日本を代表するSF作家の方々。さらに、世界中に衝撃をもたらしたSF小説『三体』を書いた劉慈欣さんも出演される豪華っぷり!
全パートがYoutubeで公開されています。SFが得意でなくとも十分に楽しめる内容です! 「アフターコロナ」を含めた未来を考えるヒントをくれると思います! (Youtubeリスト形式で、全部で1時間30分くらいでしょうか。)
あと、ブログの紹介。
この記事内で紹介した「MANGA都市TOKYO」展について、私=アラ氏の個人的なブログの方で詳しい紹介や感想を書いているので、ご興味ある方はぜひ!
今年の夏にブログを刷新したのでまだ記事は少ないですが、読んで頂けると嬉しいです!
そして最後に小説を1冊紹介します。
この記事内でも名前が挙がった、野崎まどさんの小説『タイタン』です(2020年刊行の最新作)。
この作品は人工知能「タイタン」によって社会が運営され、ほとんどの人類が《仕事》から解放されて労働をしなくなった近未来が舞台。人々は余暇活動や趣味を楽しむ日々を送ります。そんな中、"とある仕事"を依頼された内匠成果を主人公に、「働くこと」を問う物語です。
今回の2020年秋号の機関紙vol.5の冒頭で、サークル会長が次のように書いていました。
受講している大半が遠隔授業だというのに、圧倒的多忙。ろくにじっくりアニメを見る時間もなく、買うラノベや漫画は高々と積み上がっていく一方。[...] もう少し加減と言うかなんというか。...自堕落な生活が送りたいものです。[...] 大学を出たら社会に出て働かないといけないわけで...。考えたくもありませんね。
サークル2代目会長
まさにベストタイミングの言葉でした。それに、私は4年生なのでもう数ヶ月で卒業します。さらにこの記事は連載「ロボットと人工知能」の延長線上なので、ぴったりですね!
連載記事で紹介した作品
オマケということで、連載記事内で紹介した作品を掲載します。
とりあえず「アニメ・マンガ」と「映画」と「小説」の3ジャンルを取り上げますが、それ以外にも作品を取り上げたし、他にも色々と挙げてますから、やっぱり記事を読んでほしいです!
アニメ&マンガ | |
---|---|
1947 | 横井福次郎『ふしぎの国のプッチャー』 |
1949 | 手塚治虫『メトロポリス』 |
1952 | 手塚治虫『鉄腕アトム』 |
1954 | 手塚治虫『火の鳥』 |
1956 | 横山光輝『鉄人28号』 |
1966 | 円谷一『ウルトラマン』 |
1969 | 藤子・F・不二雄『ドラえもん』 |
1972 | 永井豪『マジンガーZ』 |
1974 | 永井豪『ゲッターロボ』 |
1979 | 富野喜幸『機動戦士ガンダム』 |
1982 | スタジオぬえ『超時空要塞マクロス』 |
1991 | 士郎正宗『攻殻機動隊』 |
1995 | 庵野秀明『新世紀エヴァンゲリオン』 |
1997 | 押井守『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』 |
1997 | 押井守『イノセンス』 |
1999 | 矢吹健太朗『BLACK CAT』 |
2002 | 神山健治『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 |
2008 | 吉浦康裕『イヴの時間』 |
2009 | 志倉千代丸『STEINS; GATE』 |
2009 | 川原礫『ソードアート・オンライン』 |
2009 | 細田守『サマーウォーズ』 |
2010 | 山本マサユキ『攻殻機動隊S.A.C. タチコマなヒビ』 |
2012 | 伊藤計劃『屍者の帝国』 |
2012 | 志倉千代丸『ROBOTICS;NOTES 』 |
2012 | 長谷敏司『BEATLESS』 |
2012 | 本広克行『PSYCHO-PASS』 |
2013 | 横瀬和哉『攻殻機動隊ARISE』 |
2014 | 虚淵玄『楽園追放』 |
2015 | 志倉千代丸『Steins; Gate 0』 |
2017 | 渡辺信一郎『ブレードランナー ブラックアウト 2022』 |
2017 | 伊藤智彦『ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』 |
2019 | 小野学『ソードアート・オンライン アリシゼーション』 |
2020 | 神山健治『攻殻機動隊 S.A.C._2045』 |
映画 | |
---|---|
1927 | F. ラング『メトロポリス』 |
1965 | J. アンダーソン『サンダーバード』 |
1968 | S. キューブリック『2001年宇宙の旅』 |
1977 | J. ルーカス『スター・ウォーズ』 |
1984 | J. キャメロン『ターミネーター』 |
1984 | R. スコット『ブレードランナー』 |
2002 | S. スピルバーグ『マイノリティ・リポート』 |
2004 | A. プロヤス『アイ、ロボット』 |
2008 | A. スタントン『ウォーリー』 |
2013 | S. ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』 |
2014 | M. ティルドゥム『イミテーション・ゲーム』 |
2014 | W. フィスター『トランセンデンス』 |
2015 | A. ガーランド『エクス・マキナ』 |
小説 | |
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旧約聖書「創世記」 | |
BC1300 | ギルガメシュ叙事詩 |
3 | ギリシャ神話 |
4 | ユダヤ教伝承 |
1818 | M. シェリー『フランケンシュタイン』 |
1886 | V.d.リラダン『未来のイヴ』 |
1920 | K. チャペック「R・U・R」 |
1950 | I. アシモフ『われわロボット』 |
1964 | I. アシモフ『ロボットの時代』 |
1968 | P. K. ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 |
1979 | D. アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』 |
2017 | Y. N. ハラリ『ホモ・デウス』 |
2018 | 早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』 |
*1:ISFS委員会事務局(1970)「国際SFシンポジウム趣意書」『SFマガジン』11巻8号、pp.165-166、早川書房
*2:野崎まど(2019)『HELLO WORLD』pp.157-158、集英社
*3:TOKYO FM(2015)「アポロ計画を正確に予言した「SF」作品とは?」<https://www.tfm.co.jp/garage/detail.php?id=132>
*4:「ヒストポリス 絶滅と再生」展。現代美術のうち、生物や生命等“生きた素材”を題材にしたバイオアートの展覧会。
*5:「ヒストポリス 絶滅と再生」展の公式HP<https://gyre-omotesando.com/artandgallery/histopolis/>より
*6:文化庁・国立新美術館ほか「MANGA都市TOKYO」展示より<参考:https://manga-toshi-tokyo.jp/>